About JSME学会について

 会長挨拶 


 2025(令和7)年度の会員総会において、永田繁雄前会長の任期満了を受け、私が会長の任を引き継がせて頂くことになりました。浅学非才の私にはあまりの重責ですが、歴代会長の築いてこられた礎の上に、微力を尽くして学会の充実・発展に努めてまいりたいと思います。
 本学会は、「道徳の時間」設置の前年の1957(昭和32)年に同人組織として発足し、その後の日本の道徳教育研究の中核的な役割を担う学会として発展してきました。永田前会長のもとで、2024(令和6)年に悲願であった会員数1,000名を超えることができました。
 私は、本学会の発展が日本の道徳教育の充実につながると確信しておりますが、会員数の増加はそれ自体は喜ばしいものです。しかし、会員の高齢化など本学会の抱える課題もあり、学会活動の活性化と同時に、学会運営のあり方を常に改革することが必要です。持続可能な組織づくりは、絶えざる改革によって実現されることを忘れないようにしたいと思います。
 道徳科の設置から10年を経て、学会としての道徳教育研究のあり方を厳しく問い直すことも不可欠の課題です。周知のように、道徳科設置に期待されたことの一つは、いじめ問題への対応でしたが、この10年間でいじめの認知件数は増え続けています。この事実を厳しく直視し、真摯に向き合う必要があります。それは、次期学習指導要領の改訂の問題とも連動する課題ですが、今後の道徳教育について学会の果たすべき役割を考え続けることが切実に求められると思います。
 道徳教育を取り巻く状況は厳しく、大きな「難局」に直面しています。この「難局」を克服し、道徳教育の未来を切り拓くために、本学会が担うべき役割は決して小さくはありません。そのためには、本学会の活動の活性化を図り、学会としての制度的な土台も強固なものとしていく必要があります。
 具体的に新体制では、研究委員会の機能を拡大するとともに、地方支部連絡協議会を新設して地方支部間の交流を促進するようにしました。また、喫緊の課題として、学会の会則全体を見直し、持続可能な学会運営を展開する基盤を確実なものとすると同時に、学会事務の効率化と利便性の向上を図りたいと思います。
 繰り返しますが、私は学会が発展し、道徳教育研究に貢献することが、道徳教育の充実につながるものと確信しています。しかしこれは、決して簡単なことではありません。道徳教育のより良い未来を切り拓いていくためには、本学会員が一丸となって、いわば「全員野球」で「難局」に取り組む覚悟と叡智の結集が不可欠です。
 会員の皆様のご協力と学会活動の更なる発展のために忌憚のない積極的なご意見をお寄せ頂きますようお願い致します。

2025(令和7)年7月
貝塚 茂樹